6月6日、東京・シネマート新宿で映画『シーシュポスたちのまなざし』公開記念舞台挨拶が開催され、主演の豊田ルナをはじめ平野宏周、細田善彦、根矢涼香、井上春生監督が登壇した。いじめやSNSによる風評被害、情報社会における“真実”をテーマにした本作。豊田は初主演作への思いとともに、作品が投げかけるメッセージについて語った。 左から 根矢涼香、平野宏周、豊田ルナ、細田善彦、井上博貴監督 完成した作品を観た率直な感想を求められた豊田は、「この作品は2年ほど前に撮影したので、完成した作品を観て、無事にこういう形になったことがとても嬉しかったです。普通の映画とは少し違って、ドキュメンタリーっぽさも残る作品なので、よりリアリティが伝わりやすい仕上がりになっていると感じました。また、自分が見ているものだけが真実ではなく、いろいろな人にいろいろな見方があるということを感じられる作品で、とても考えさせられる作品だなと思いました」とコメント。初主演作の完成を喜ぶ一方で、本作が投げかける“真実とは何か”という問いに真摯に向き合う姿勢も垣間見えた。 続いて感想を求められた平野は、「まったく同じですね! 言いたかったことを全部言ってもらいました(笑)」と笑顔で応じ、会場を和ませる。 さらに細田は、「2年前に撮影された作品なのに、2年後の今もなお直面している問題であり続けている」と語り、井上監督の脚本が持つ普遍性を称賛。その一方で、「それにしても、ふたり(豊田と平野)が若くて可愛かったなと思いました(笑)」とユーモアを交え、会場には再び笑いが広がった。 また、「この作品で特に描きたかったテーマや印象的なシーン」について問われた井上監督は、「SNSなどでは片方の情報だけで、その瞬間にイメージが定着してしまうことがあります。そこから抜け出せない人もいて、そうした孤独感や、その人に関わる人たちにどのようなことが起こるのかを描きたいと思いました。また、孤独な佇まいのようなものも表現したいと考えていました」と、言葉を慎重に選びながら語った。 近年、SNS上での断片的な情報による誤解や分断が社会問題となる中、本作が描くテーマは決してフィクションの中だけの話ではない。監督の言葉からは、情報があふれる現代社会への静かな問題提起が感じられた。 また、脚本を初めて読んだ時の印象について、豊田は「難しいなって思いました。セリフも多くて、全部覚えきれるんだろうかと不安にもなりました。でも、インタビューを軸に構成されていくというのが新しくて、私自身も今まで演じたことのない役柄だったので、挑戦してみたいと思いました」と振り返る。主演としてのプレッシャーを感じながらも、新たな表現への挑戦を選んだ当時の心境を明かした。 一方、平野は出演の理由について、「断る理由がなかったからです(笑)。以前から監督ともご一緒させていただいていましたし、僕はあまり仕事を断るタイプではないので」と会場の笑いを誘う。しかし脚本については、「ストーリーがどう進んでいくのかすごく気になりました。真実は何なのか、どちらが本当なのかを考えながら読んでいました。僕自身、答えを知りたくなるタイプなので、『結局どっちなんだろう』と思いながら読んでいたのを覚えています」と語り、本作の持つミステリアスな魅力に引き込まれていたことを明かした。 更に「ネット上のニュースに触れる際に気を付けていること」について質問されると、豊田は、「いろんな媒体やさまざまな人の意見を聞いたり、自分でも調べたりしています。SNSで発信することもあるので、世界中に向けて発信しているという意識を持ちながら、間違いがないよう何度も確認しています」と回答。作品のテーマとも重なる“情報との向き合い方”について、自身の考えを真剣に語った。 最後に観客へ向けてメッセージを求められた豊田は、「本日映画をご覧になって、一人ひとり感じたことがあると思います。皆さんが信じるものが、この映画における真実だと思います。これからも、その真実を胸に抱きながら日常生活を過ごしていただけたら嬉しいです」と締めくくった。 舞台挨拶の最後にはフォトセッションが行われ、観客に向けて撮影タイムが設けられた。登壇者たちが笑顔で応える中、会場には無数のシャッター音が響き渡り、その音は作品やキャストに向けられた観客の熱量を映し出しているかのようだった。撮影終了の案内が入った後もシャッター音はなかなか鳴り止まず、『シーシュポスのまなざし』への高い関心と期待を感じさせる舞台挨拶となった。 ストーリー 男性教諭の男子生徒への不適切な行為は、本当にあったのか…!?主人公・黒田真優が在籍する大学では、ドキュメンタリー作品の制作を行う授業があった。真優は、高校時代に男性教諭・新田が男子生徒・野島へ不適切な性的行為をしてしまう不祥事を起こし、週刊誌の記事、当事者の実名を晒すSNSの投稿などから当事者である野島の人生が変わってしまった経験から、その当時を振り返ることをテーマにしたドキュメンタリーの企画案を提出すると採用され、真優がその作品の監督を務めることになる。真優は当事者の野島を放送部の先輩として慕い、好意を抱いていたのだが、野島はその騒動をきっかけに、今までのように学校に来ることがなくなり、普通の生活ができなくなってしまう。そんな事の顛末に対する理不尽さを感じていた真優は、些細なきっかけで噂やSNSの情報などに影響されてしまう集団心理の危うさを検証し、そういった情報社会に警笛を鳴らすような作品を目指すつもりだった…。撮影や取材を進めるにつれ、その騒動を掘り起こすことを地域として歓迎していないことを肌で感じ、徐々に自身の構想通りに取材が進まなくなり、当時真優が知らなかった事実や、忘れてしまっていた騒動に纏わる自身の行為、野島の知らない一面、そして不適切な性的行為を行なった新田と野島の関係を知っていくことになっていくことになる。苦き青春の想い出を遡りながら、知られざる様々な思惑によって隠された過去の事実に遭遇していく―。 豊田ルナは今年開催された横浜国際映画祭にも登場。レッドカーペットでは多くの観客から声援を受け、華やかな存在感を放っていた。 豊田ルナ、透明感あふれる存在感『シーシュポスたちのまなざし』レッドカーペット登場【第4回横浜国際映画祭】