映画やドラマで確かなキャリアを築いてきた女優・酒井美紀さんが、今年2月から舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』でハーマイオニー役として出演。聡明で勇敢、そしてチャーミングなハーマイオニーを、ロングラン公演という新たな挑戦のなかでどのように体現しているのか。舞台の魅力、共演者との絆、さらには古代エジプトへの情熱まで、たっぷりと語っていただきました。

撮影:山本春花

酒井美紀さんが感じるハーマイオニーの魅力と、自身との違い、新キャストとしての挑戦

― 2月からご出演中の舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』ハーマイオニー役として数ヶ月舞台に立たれてみて感じられるハーマイオニーの魅力はどんなところにあるでしょうか?

酒井さん: 映画をご覧になった方はご存じだと思いますが、ハーマイオニーの魅力はその強さや賢さにあります。それに加えて、私が舞台で演じていて特に感じるのは、彼女の “女の子らしいチャーミングさ” です。とくに、(夫である)ロンとのやり取りの中では、強くて勇敢な姿だけではなく、可愛らしくて愛嬌のある一面も垣間見えます。そこが、ハーマイオニーならではの大きな魅力だと思っています。

― 強くて聡明、かつチャーミングということですが、酒井さんご自身と通じるところもあるのではないですか?

酒井さん: 彼女のことは、うらやましい限りです。彼女の能力とか聡明さというところを、演じながら感じつつ、似ているなという感覚よりはうらやましいなと感じることが多いですね。

― 今回、ロングラン公演の舞台に新キャストとして入られたわけですが、途中から加わるというのは勇気のいることだったと思います。このような新しい環境に飛び込むときのご不安や葛藤はありましたか?もしあれば、それをどのように乗り越えられたのでしょうか?

酒井さん: それこそ転校生ではないですけど、2年目の方が3年目を今演じ続けておられることもあり、とにかく凄く仲の良いチームの輪が出来ていて、お互いの呼び方だけでもその親密さが伝わってくるんですね。その中に、ポッと入っていく時には、「早くみんなと仲良くなりたいな」と思いましたし、チームの雰囲気というのは芝居にも影響するところがありますので、焦らず、でも早く皆さんに打ち解けていきたいと思っていましたね。
 私にとって、ロングランもそうですし、トリプルキャストも初めてのこと。ある意味、目指すべき姿が見えている状態での稽古であったり、本読みだったりなので、最初は「どうしたらいいのだろう?」と戸惑うこともありましたが、このチームはとても絆が強くて、舞台を経験すればするほどその絆が強くなっていくんですね。なので、本番が終わって疲れているにもかかわらず、本番後に稽古にお付き合いしてくださるなど支えてくださったことにより、最初に感じた不安があっと言う間に解消されましたね。みなさんの思いやりで大変な稽古も乗り越えられたと感じています!

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘

舞台ならではの魅力と共演者との絆

― 映画『ラブレター』でデビューされてから30年、様々な映画やドラマで演じることを生業としてこられましたが、舞台で演じること舞台の魅力は何でしょうか?

酒井さん: ライブ感ですね。映画やテレビにはそれぞれ違う魅力がありますが、やっぱり舞台はお客さんと共にライブで作り上げるというという面白さがあって、特に今回はキャストの組み合わせがたくさんあって、同じ場面、同じ台詞であったとしても、毎回舞台上で起こる化学反応は違うものですね。また、お客さんの反応ですね!私たちは芝居しながらお客さんからエネルギーをもらっています。演者とお客様と同じ時間、空間を共有できるところが舞台の素晴らしさだと思っています。

― お客様と同じ時間と空間を共有できるとありましたが、実際に舞台上でそういったことを感じられた瞬間はどのようなものでしたか?

酒井さん: 私は今年2月から舞台に参加し、まだ20回ほどの経験ですが、やはりお客さまの反応を取り入れながら演技に繋いでいくという場面がたくさんあります。たとえば、演じている中で “このタイミングでお客さまが笑うんだな” と気づいたら、次回からはそのタイミングで少し間を取って、余白の時間を提供できるよう意識することもあります。まさに、お客さまと一体感を持ちながら演じることができていますね。また、本番中でも自分の出番を待ちながら舞台をじっくり観ていると、役作りに集中しているはずが、思わず引き込まれて泣きそうになることもあるんです。魂を込めて演じる役者の姿に、こちらも感動してしまいます。

― 演じる側に居ながらにして、この舞台の面白さを日々発見しておられる様子がうかがえますが、これから舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』を観劇される皆さまに、酒井さんが考える見どころを教えてください。

酒井さん: 大きなテーマに「愛」があり、作品の随所にその愛が散りばめられています。たとえば、ハリーと息子のアルバスとの関係性。お互いに愛情はあるのに、うまく伝わらない…..そんな家族間の愛情が描かれているんです。映画では主役でありヒーローだったハリーですが、実はそれほど完璧ではなく、周囲に支えられて生きている存在であることが、彼の魅力だと思っています。今回、父親になったハリーも、なかなかの 「未完成ぶり」 を発揮していて(笑)。舞台では、友情を超えた深い愛情を感じていただけるのではないでしょうか。そしてもちろん、「魔法」も見どころのひとつです!私自身、初めてこの舞台を観た時、「うわー!」と驚いてしまうくらい、ハリー・ポッターならではの魔法がたくさん詰まっています。

写真提供:TBS/ホリプロ 撮影:渡部孝弘

ウクレレやフラメンコへの挑戦、古代エジプト考古学への情熱まで、多才な一面を持つ酒井さん

― 最後に、お仕事もプライベートも含めて、今後「これは絶対に挑戦したい!」と思っていることがあればお聞かせいただけますか?

酒井さん: まだ挑戦できていないことがいくつかあって、そのひとつがウクレレです。いつかぜひチャレンジしてみたいですね。フラメンコも続けてはいるのですが、まだまだ上達しているとは言えないので、いつか本場スペインに行って、現地のフラメンコ教室でレッスンを受けてみたいという夢もあります。『ハリー・ポッターと呪いの子』のカンパニーには本当に多才な方が多くて、歌はもちろん、楽器を演奏できる人もたくさんいるんです。そんな仲間たちに刺激を受けることが多く、私も「何か楽器をやってみたいな」と思うようになりました。ギターにも憧れるのですが、手があまり大きくないので、ウクレレのほうが合っているかなと思っています。

― エジプト考古学にも興味がおありですよね。

酒井さん: そうなんです。私は古代エジプトに関心があって、毎年エジプトに行き、アカデミアチームの発掘メンバーとして加わらせてもらっています。発掘作業はとても繊細で、慎重に進めなければならないのですが、小さなものでも何かを発見できたときは、本当に大きな喜びがありますね。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』で新たなハーマイオニー像を紡ぐ酒井美紀さん。その姿勢は、舞台上だけでなく、人生においても探求心と情熱を持って新しい世界に飛び込んでいく、まさに酒井さん自身の生き方そのものかもしれません。演じることへの真摯な想い、仲間への信頼、そして観客との一体感を何よりも大切にする姿勢を、ぜひ劇場で体感してみてください。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』公演情報

○日程:ロングラン上演中(2025年10月までのチケット好評販売中)
○会場:TBS赤坂ACTシアター
○上演時間:3時間40分 ※2幕、途中休憩あり

チケットは、こちらから

https://www.harrypotter-stage.jp/schedule-tickets/