12月15日(月)、都内にて、日本財団は、スポーツやアスリートの力を活用し社会貢献活動を推進・活性化するプロジェクト「HEROs~Sportsmanship for the future~」の一環として、活動のロールモデルを表彰する「HEROs AWARD 2025」を開催。大相撲元横綱・白鵬翔氏、フェンシング元日本代表・池田めぐみ氏、日本サッカー協会、ソフトバンク株式会社が受賞。あわせて、元サッカー日本代表・中田英寿氏らが登壇するトークセッションも行われ、スポーツが持つ社会的価値や未来への可能性について語られた。 HEROs AWARD 2025 白鵬翔氏 『白鳳杯』相撲が持つ世界平和の精神を子供たちに残したい 世界中の子どもたちに、相撲を通じて日本の文化や礼儀といった精神性を伝え、差別や争いのない平和な社会の実現をビジョンに掲げ、国際親善を促進する少年相撲の世界大会「白鵬杯」。白鵬氏はこれまで同大会を開催してきた。今年で15回目を迎える本大会では、ウクライナの子どもたちや、能登半島地震で被災した子どもたちへの支援も実施された。 大会創設当初は、自費での運営を余儀なくされるなど多くの困難があったという。しかし、活動を継続する中で次第に理解者や支援者が増え、相撲への、そして世界への恩返しという思いを形にしてきた。白鵬氏の言葉からは、揺るぎない信念と、世界平和への強い希望が感じられた。 相撲やる子は日本の宝 国技・大相撲の人気に陰りを感じたことをきっかけに、白鵬氏は国際相撲大会「白鵬杯」を立ち上げたという。「当時25歳だった私は、相撲界に危機感を抱き、白鵬杯を開催することを決めました。最初の3回は支援を受けることができず、懸賞金を使って子どもたちの交通費や宿泊費を工面していた時期もありました」と振り返った。4回目以降は、北海道から沖縄まで全国各地で支援の輪が広がり、現在では多くの協力者に支えられる大会へと成長。「そうした積み重ねがあり、今年で15回目を迎えることができました。この継続が、今回の受賞につながったのだと思います」と語った。 15回の開催を通じて感じていることについては、「子どもたちがこれほど相撲を好きでいてくれるということ。子どもたちの笑顔や涙を見ると、また来年も続けようという気持ちになります」と述べ、相撲への恩返しという思いを明かした。印象的な成果として、現役横綱の大の里や豊昇龍が白鵬杯の経験者であることにも触れ、「外国人力士も誕生しており、活動の成果が形になってきていると感じています」と話した。 また、白鵬氏は毎年子どもたちに伝えている言葉として、「相撲をやる子どもたちは、この国の宝」と強調。日本の伝統文化の中でも相撲は特別な存在であり、「相撲を通じて一つ屋根の下で交流できることは、非常に意義深い」と語った。 白鳳氏の今後の挑戦 今後の挑戦について問われると、白鵬氏は「地球上を振り返ると、約150か国にそれぞれの国の相撲が存在している」と語り、それらを一つの屋根の下に集めていく構想を明かした。「相撲をスポーツとしての頂点、オリンピック競技にしていくことを目指していきたい」と述べ、国際的な発展への意欲を示した。 現在については、「毎日ワクワク、ドキドキしながら仕事に励んでいます」と語り、相撲の未来に向けた挑戦を続けているという。今年は相撲の世界大会がタイで開催され、来年はアゼルバイジャンでの開催も決定している。今後については、「ゴルフやテニスのように、より世界規模の国際大会へと発展させていきたい」と展望を語った。 礼に始まり礼に終わる、相手がいてこそ自分がいられる、の精神が世界平和につながる 相撲について白鵬氏は、「礼に始まり、礼に終わる。相手がいてこそ自分が存在できるという考え方は、日本の文化であり、哲学だと思います」と語った。そのうえで、「この精神を身につけることで人として成長し、他者をリスペクトする心が育まれる。それが、世界平和につながっていくのではないかと思います」と述べ、相撲が持つ精神的価値の大きさを強調した。 フェンシング元日本代表・池田めぐみ氏 アスリートの力で地域活性 フェンシング元日本代表・池田めぐみ氏は、アスリート人生を通じて培ってきた「コンディショニング」に関する専門的な知識と経験を生かし、地元地域のウェルビーイング向上を目指した取り組みを続けてきた。農業、教育、産後ケア、ジュニアスポーツなど、幅広い分野へアプローチしながら、コンディショニングを身近なものとして浸透させ、ライフパフォーマンスの向上に寄与してきた点が高く評価され、今回の受賞に至った。 フェンシング元日本代表・池田めぐみ氏は、アスリート時代に実践してきた「心と体を整える」コンディショニングの考え方を、スポーツの枠にとどめず、地元・山形の日常へと落とし込む取り組みを行ってきた。「みんなが思い通りの人生を送ってほしい」という思いから活動をスタートさせ、地域に根差した形でコンディショニングの普及に努めている。 活動を通じて学んだことについては、「人と人とのつながりは化学反応を起こし、想像もしなかった未来を築くことができる」と語る。自ら行動することで多くの人と出会い、さまざまな形で“やりたいこと”を実現してきた経験を、「誇りに思っています」と振り返った。 また、現役アスリートへのメッセージを問われると、「スポーツには勝ち負けだけではない価値がある」と強調。「アスリートは『希望をありがとう』『感動をありがとう』『勇気をもらった』と言われる存在ですが、それだけではない価値があると思っています」と述べ、自身の現在の活動がフェンシングやスポーツの枠を超え、より多くの人に届いていることに触れた。 さらに、「私たちが培ってきた価値は、コンディショニングというスキルとして伝えていくことができる。世代を超えて多くの人に届けられる活動であることを誇りに思います」と語り、アスリートの価値は競技結果だけでなく、その先の未来にも広がっているとした。「自分たちが歩んできた道を実感し、共感してもらえる未来がある。専門競技を教えることはもちろんですが、より広く、人々の健康や暮らしにも目を向け、生きる目的につながる活動をしていってほしい」と呼びかけ、「手を取り合いながら、その輪を広げていきたい」と締めくくった。 日本サッカー協会(JFA) 長島昭久氏 47都道府県のサッカー協会が連携し、サッカーを通じて被災地に希望の灯をともすプロジェクトにより、「HEROs AWARD 2025」を受賞した公益財団法人日本サッカー協会(JFA)。授賞式では、同協会を代表して長島昭久氏が登壇し、活動への思いを語った。 長島氏は、30年前の阪神・淡路大震災で自身も被災した経験に触れ、多くの人からの支援や励ましが自らの心を奮い立たせてくれたこと、そして今なお深い感謝の気持ちを抱いていることを明かした。言葉を紡ぐ中で、目に涙をためる場面も見られた。 本プロジェクトでは、サッカーというスポーツを通じて被災地の子どもたちの心のケアを行うとともに、必要な支援物資の提供や、クラウドファンディングなどによる復興支援金の募金活動を実施。こうした幅広く継続的な取り組みが高く評価され、今回の受賞に至った。 便利な世の中、でもやはり人との直接の関わりがとても大切 能登半島地震の復興活動について質問が及ぶと、長島昭久氏は次のように語った。「多くの皆さんのご協力のおかげで、昨年は125回の復興支援活動を行うことができました。現場のニーズに応えるため、日本代表OB/OG会を中心に人材を派遣することができたことも大きかったと思います。活動を通じて強く感じたのは、現地の皆さんがご自身も大変な状況にあるにもかかわらず、私たちに気を遣ってくださる姿勢です。その心遣いに、何度も胸を打たれました。能登の方々の芯の強さを感じながら、サッカー界として何ができるのかを、『相手の目を見て、顔を見て』考え、今自分にできることを感じ取りながら行動できたことこそが、JFAの強さだと思っています」 また、自身が被災した阪神・淡路大震災から今年で30年を迎えることに話題が及ぶと、当時を振り返りながら次のように述べた。「実家は全壊し、何よりも最優先されるのは命を守ることでした。家族も近所の方々に助けられ、寒い中、避難所で人々が支え合って過ごしていた光景は、今でも鮮明に記憶に残っています。その経験があるからこそ、東日本大震災の際には息子を連れて現地を訪れ、能登半島や熊本にも足を運んできました。私は『言葉よりも行動』が大切だと考えています。現場に行き、何が起きているのかを自分の目で見て、一人でも多くの命を救うために何ができるのかを常に考えながら行動していきたいと思っています」 その言葉からは、被災地への深い思いと、行動を貫いてきた長島氏の信念が強く伝わってきた。 ソフトバンク株式会社 『AIスマートコーチ』プロジェクトを立ち上げ、テクノロジーを駆使してスポーツ教育の質の向上と教育格差を実現する取り組みが評価されての受賞となった。スポーツ技術やスキルの向上のみならず、地域間教育格差の解消や部活動への積極的活用もみられた。 元サッカー日本代表・中田英寿氏らトークセッション スポーツやアスリートが社会に与える価値について、教育や社会といった多角的な視点から議論するトークセッションが開催された。元サッカー日本代表・中田英寿氏、ローレウス・スポーツ・フォー・グッド財団/ローレウス・ワールド・スポーツ・アカデミー チェアマンのショーン・フィッツパトリック氏、日本財団 理事長・笹川順平氏らをパネリストに迎え、中田氏が日本財団へアプローチした経緯をはじめ、継続的なアクションの重要性や、人を巻き込みながら取り組みを広げていく意義について、活発で有意義な意見交換が行われた。 日本財団とは 痛みも、希望も、未来も、共に。日本財団は 1962 年、日本最大規模の財団として創立以来、人種・国境を越えて、子ども・障害者・災害・海洋・人道支援など、幅広い分野の活動をボートレースの売上金からの交付金を財源として推進しています https://www.nippon-foundation.or.jp/ HEROs Sportsmanship for the future トップアスリートが社会の SOS に応える社会貢献活動を推進するプロジェクトです。災害復興支援、難病児支援、少年院更生支援など日本全国の様々な社会課題の現場において、アスリートたちが競技人生の中で培ってきた力を生かして社会貢献に取り組んでいます。アスリートのパワーを社会のために発揮することで、課題に取り組むプレイヤーの輪が広がり、課題解決が加速していくことを目指しています。https://sportsmanship-heros.jp/about/award/https://www.instagram.com/heros_nippon_foundation/