AKB48の佐藤綺星が10月3日、kino cinéma新宿で行われた映画『歌って!』の公開記念舞台挨拶に登壇。W主演の谷中詩、ノボせもんなべ、高村剛志監督とともに撮影を振り返った。監督が明かした主演起用の意外な理由や、現役アイドルならではの苦労、ファンへの思いなど、上映後だからこそ聞けるエピソードが飛び出した。

映画『歌って!』は、アイドルの華やかなステージの裏側にある葛藤や友情を描いた青春映画。佐藤は、突然、親友の代役としてステージに立つことになった女子高生・海梨を演じ、映画初主演を果たした。

「巨大なスクリーンに自分がいるって思うだけで、不思議な感じ」映画好きで、一人でも映画館に足を運ぶという佐藤。初主演のオファーを受けた際の率直な気持ちを明かし、AKB48として活動する自身と重ねながら、歌で思いを届けることの大切さを伝えたいと撮影に臨んだという。

そんな佐藤を主演に選んだ決め手について、高村監督は「声です」と即答。「声の響きに嘘がない感じがするんですよ」佐藤の普段の人柄にも触れながら、声を聞いた瞬間に主人公・海梨のイメージが重なったと説明。初めて聞く起用理由に、佐藤も「嬉しい!」と顔をほころばせた。

撮影の裏話では、当初は短編として企画されていた作品が、脚本を書き進めるうちに長編のボリュームになったことも判明。撮影期間はわずか3~4日間。限られた時間の中、何度も練習を重ね、できるだけ一度で撮り切ることを目指したという。

現役アイドルの佐藤にも、意外な苦労があった。ダンスが得意な佐藤にとって、ダンスが未経験の海梨を演じるにあたり、あえて上手に踊らないことが難しかったという。リズムが体に染みついているだけに、完成した映像を見て、もう少し踊れないように演じられたのではないかと振り返った。

話題がアイドル活動の苦悩に及ぶと、佐藤の表情からは、ステージ上とはまた違った一面がうかがえた。自分の理想や目標に届かないときの苦しさを、誰にも言えずに抱えてしまうことがあった際、握手会などで、ファンの皆さんが自分でも意識していなかった仕草や振り付けを褒めてくれることが支えになったと語った。「自分が目標とかゴールを決めてるけど、その過程でもしっかり見てくれてる人がいる」

その言葉は、高村監督が語った映画制作のきっかけにも通じていた。監督は、知人のアイドルの解散ライブを訪れた際、ステージで歌うアイドルと、それに応えるファンの姿に心を動かされたという。「アイドルって、アイドル単体を指すんじゃなくて、きっとファンも含めてアイドルなんだなって思った」アイドルはかわいいだけではなく、かっこいい。その魅力を伝えたいという思いから、本作が生まれた。

舞台挨拶の最後、佐藤は「自分のペースで立ち止まっても、休憩してもいいから、そのままのあなたでいいんだよ」と、観客に語りかけた。客席からの撮影タイムが始まると、場内には一斉にシャッター音が響き、思い思いにデコレーションされた応援うちわが揺れた。

カメラを構えながら印象に残ったのは、先ほど監督が語った言葉だった。アイドルが歌い、ファンが応える。その関係の中でアイドルは形作られていく。目の前に広がる光景が、映画『歌って!』の制作に込められた思いと重なった。