経済界部門の受賞者は、経済学者で起業家の成田悠輔。独特の語り口とユニークな視点で注目を集める成田さん。この日は壇上で5種類のメガネを次々に掛け、照れ笑いを浮かべる一幕も。トレードマークの丸や四角のフレームだけでなく、どのデザインもよく似合い、「メガネが知性を映し出す」という彼らしさを体現していた。

受賞スピーチの3秒前に「何も考えていなかった」と笑いながら話し始めた成田悠輔さん。「メガネは救いだなと思うんです」と切り出し、続けて「自分は視力が悪いので、もし太古の昔に生きていたら外敵に襲われたり、仲間とはぐれたり、すぐに命を落としていたと思います。そう考えると、いま自分のような人間が生きていられるのはメガネのお陰なんです」とユーモアを交えて語った。

さらに、「メガネは弱いものや少し変わったものを救ってくれる存在だと思います。技術やテクノロジーも同じで、放っておけば排除されてしまう人や考えを包み込む力を持っています」と力強く言葉を続けた。「いま世界中で外国人嫌悪や差別の動きが広がっています。だからこそ社会に必要なのは『メガネの精神』だと思います。日本も世界の中でメガネのような存在になってほしい」とメッセージを送った。

囲み取材で改めて受賞の感想を問われると、「辛いな。カメラが苦手で、光を浴びれば浴びるほど干からびていくナメクジのような存在です」と自虐を交えつつ感謝を述べた。メガネへのこだわりについては「どうせ掛けるなら変なものか、あるいはどこまでも快適なもの」と語り、これまでの丸や四角から「そろそろ星形の眼鏡に移行しようかな」とユーモラスに答えた。

さらに「メガネは自分の弱さに気づかせてくれる身近なアイテム。視力のハンデを意識させ、掛ければ解像度が上がり、他者をより深く理解できる」ともコメント。所有するメガネの数は「3~4個だけで壊れたら買い替える、エコでサステナブルな人間です」と笑いを誘った。最後に、将来あったらいい機能を問われ「視界から嫌な人が消えてしまうメガネ」と独特の言葉で締めくくった。