ゲスト登壇者の3名 左から、笹野高史、山田洋次監督、北山雅康

『男はつらいよ』ファン大感謝祭イベントが、今年も8月27日、聖地・葛飾で開催された。“一夜限りの寅さんナイト”には、山田洋次監督をはじめ、笹野高史さん、北山雅康さんが登壇し、それぞれが熱い思いを語り合った。さらに、11月21日公開の最新作『TOKYOタクシー』(出演:倍賞美津子、木村拓哉)の撮影秘話も明かされ、会場は大いに盛り上がった。

昭和44年(1969年)8月27日、山田洋次監督・渥美清主演の映画『男はつらいよ』が公開された。笑いと涙で観客を魅了し続けた本作は、のちにギネスブックに認定され、総観客動員数8,000万人を超える国民的シリーズへと成長した。そして半世紀を経たいまも、その人気は衰えることを知らない。今年のファン感謝祭には、山田洋次監督を一目見ようと、世界各国から世代も性別も超えてファンが集結。小さなお子様から年配の方まで、男女問わず熱烈な声援を送った。

第1作誕生の裏にあった、山田洋次監督の“不安と安堵

冒頭のあいさつで山田洋次監督は、半世紀以上前の“はじまりの日”を振り返りながら、こんな本音を語った。「今から思えば遠い昔ですが、第1作を撮ったときは正直とても不安でした。完成した作品を撮影所でスタッフと一緒に見ても、“本当に笑えるのだろうか? 一生懸命作ったけれど、まじめな映画になってしまったかもしれない。観客は笑わないんじゃないか”と不安でいっぱいでした」

そして、コメディアン渥美清を主演に迎えながらも「もし笑いが起きなければ失敗だ」と感じていたことを明かした。しかし現実は、公開されるや映画館で「観客がみんな笑っている」との知らせを受けることに。監督は信じられない気持ちで新宿の映画館へ駆けつけた。「それが1969年の今日のことです」と感慨深く語る監督の挨拶に、会場から温かな拍手が送られた。

77歳で叱られるなんて…ちょっと変? でも幸せ”笹野高史の告白

笹野高史さんは「隣に監督がいらっしゃると、いつダメ出しがくるのかヒヤヒヤしますよ」と会場を笑わせながら、ファンから寄せられた“役作り”についての質問に意外な答えを返した。
「いえいえ、私は役作りなんてしたことがありません。『役作り』という言葉は歌舞伎の方が使うもので、私たちは役を“作る”ことなんてできないんじゃないか。工夫することはありますけれど」と語ると、山田監督も「確かにね。役を作るのは監督の仕事かもしれませんね」と同意し、会場は真剣な面持ちで耳を傾けた

さらに笹野さんは“役作り秘話”として、自身も出演した11月21日全国の劇場で公開される『TOKYOタクシー』の撮影エピソードを披露。「私、77歳になりますが、監督からずっと叱られていたんです。他の現場では叱られることはまずないんですが……。今年もまた叱られましてね。この歳になって叱られるなんて、もう嬉しくてしかたがないんですよ」と茶目っ気たっぷりに語ると、客席からは大きな拍手と笑い声が湧き上がった。

ポーランドのファンからの贈り物 - 50か所巡礼アルバムに監督も感激

ポーランドから駆けつけた熱狂的な男性ファンは、この日のために約1か月をかけて全国50か所を巡礼。撮りためた写真を一冊のアルバムにまとめ、山田監督へと手渡した。監督は一枚一枚ページをめくりながら「懐かしいね」と目を細め、長きにわたり愛され続けるシリーズの力をあらためて実感させるひと幕となった。

最後は、集まったファンに温かく囲まれる形での記念撮影。会場が一体となった余韻の中、そのまま第42作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』が上映され、笑いと感動に包まれた特別な時間が流れた。

TOKYOタクシー (主演:倍賞美津子 / 木村拓哉 / 監督:山田洋次)

トークショーでは、11月21日に全国公開される最新作『TOKYOタクシー』の撮影秘話も披露された。
木村拓哉さんの印象を聞かれた山田監督は、お仕事するのは今回で二度目と明かしながら、こう語った。
木村くんは本当に素晴らしかった。改めて“あんなに誠実な役者なんだと感じさせられました」

倍賞千恵子さんのワンカット撮影の際、本来なら木村さんの出番は終わって帰っていい状況。しかし木村さんは「本来倍賞さんの前にタクシーを運転する自分がいるんですよね。であれば僕も残ります」と言って現場に残った。「そういう人なんですよ、彼は」と山田監督は絶賛した。