2023年 7⽉から 10⽉にかけて開催される『東京の磁場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ 2023』(⼀般社団法⼈東京ビエンナーレ)に先駆け、2022年10⽉6日から「東京ビエンナーレ 2023 はじまり展」が都内複数会場にて先行開催される。前日の5日には、東叡⼭ 寛永寺にて記者会見が行われ、総合ディレクターを務める東京藝術大学教授の中村政人氏やキュレーションであり心理療法士の西原珉氏をはじめ、日比野克彦氏などアーティストがビエンナーレの魅力と自身の作品について語った。

東京ビエンナーレ 2023 をより深く知る「はじまり展」とスペシャルイベント

アーティスト日比野克彦氏の作品:ALL TOGETHER NOW (Transforming box series)

東京ビエンナーレ2023は市⺠参加型の継続的な取り組みであり「東京ビエンナーレ 2023 はじまり展」はその起点となる催しです。舞台となるのは、2025 年に創建 400年を迎える東叡⼭ 寛永寺や、都市型総合エンターテインメント施設・東京ドームシティ、戦前から改修を経て現代も残る看板建築・優美堂など、いずれも固有の背景と可能性をもつ場です。地域社会や地元企業、多様な参加者らと共に展開される、「つながり」の「はじまり」にぜひお⽴ち会いください。また「東京ビエンナーレ 2023 はじまり展」会期中には関連イベントとして、シンポジウムとトークセッションを開催します。新たに掲げられたテーマ「リンケージ つながりをつくる」をより深く理解することができる機会となります。ぜひ会場にてご参加ください(両イベントともにライブ配信は致しません)。

総合ディレクター 中村政⼈の作品:メタユニットM1 project

開催概要

[タイトル] 東京の地場に発する国際芸術祭 東京ビエンナーレ 2023
東京ビエンナーレ 2023 はじまり展
[会 期]  2022 年 10 ⽉ 6 ⽇(⽊)〜10 ⽉ 30 ⽇(⽇)※メイン期間
[会 場]  東叡⼭ 寛永寺、東京ドームシティ、優美堂ほか
[休場⽇]  寛永寺会場:⽉〜⽔曜⽇(祝⽇は開場)優美堂会場:⽔曜⽇
[時 間]  寛永寺会場:10:30‒16:30(⼊場は 16:00 まで) ※根本中堂は 15:30 最終⼊場、16:00 閉場
東京ドームシティ会場:終⽇公開(夜間 1:30‒4:30 は⽴⼊不可)
優美堂会場:11:30‒18:00(⽊・⾦・⼟は 20:00 まで)
[料 ⾦]  ⼊場無料(⼀部、有料イベントあり)
[主 催]  ⼀般社団法⼈東京ビエンナーレ
[後 援]  千代⽥区、中央区、⽂京区、台東区、⼀般社団法⼈千代⽥区観光協会
⼀般社団法⼈中央区観光協会、⼀般社団法⼈⽂京区観光協会、東京藝術⼤学
[協 ⼒]  東叡⼭ 寛永寺、アーツ千代⽥ 3331 ほか
[助 成]  令和4年度⽇本博イノベーション型プロジェクト(独⽴⾏政法⼈⽇本芸術⽂化振興会/⽂化庁)

【シンポジウム】批評とメディアの実践プロジェクト[Relations]主宰

「都市型国際芸術祭はどこに向かうのか?〜ポストコロナ、アートの変容、そして新しい関係性〜」転機を迎えた都市型国際芸術祭の未来を、⽇本の現代美術や地域型国際展の研究者を迎えて議論します。国際芸術祭が、ここにきて⼤きな転機を迎えています。21 世紀に⼊って、ビエンナーレやトリエンナーレと呼ばれる国際芸術祭は、地域活性化やアート・ツーリズムと結びついて世界中で広がってきました。けれども、2020 年代に⼊って重⼤な岐路に⽴っています。新型コロナウイルスの感染拡⼤が観光産業にダメージを与える⼀⽅で、グローバル化や新しいメディアテクノロジーの発達の中でこれまで芸術と呼ばれていた領域が⼤きく変容しています。こうした中で国際芸術祭はどこへ向かうのでしょうか。

⽇本現代美術の美学研究者で、積極的に⽇本⼈アーティストのインタビュー調査や国際芸術祭の調査に取り組んでいるクレリア・ゼルニック(パリ国⽴⾼等芸術⼤学教授)、⽇本の地域型国際展覧会の研究者で、ワークショップやシンポジウムを⽇本やヨーロッパで組織してきたグンヒルド・ボーグリーン(コペンハーゲン⼤学准教授)を迎え、東京ビエンナーレ 2023 共同総合ディレクターの⻄原珉も加わり、都市型国際芸術祭の未来を論じます。

RELATIONS WEB サイト https://relations-tokyo.com/

[登壇者]クレリア・ゼルニック(パリ国⽴⾼等芸術⼤学・教授・美学)、グンヒルド・ボーグリーン(コペンハーゲン⼤学・准教授・美術史/視覚⽂化論)、⻄原珉(東京ビエンナーレ 2023 共同総合ディレクター)

[司会]⽑利嘉孝(東京藝術⼤学・教授・社会学/⽂化研究)
[⽇時]10 ⽉ 15 ⽇(⼟)14:00-16:00
[会場]寛永寺 ⼤書院
[料⾦]1,000 円(要予約)
[定員]40 名
※批評とメディアの実践プロジェクト[Relations]とは
新しい時代の新しいアートの形式をめぐる批評とメディアの実践の試みです。それは、アートを中⼼としながらも、アートとその隣接領域、社会や経済、政治や科学テクノロジーの「関係性」を探るものです。それは「東京ビエンナーレ」の⼀部をなしつつも、「東京ビエンナーレ」やそれに関連するプロジェクトを批判的に検証しつつ、新しいアートのあり⽅を模索する試みなのです。

【トークセッション】
東京ビエンナーレ 2023 の構想を多様な作家・企画者陣が語ります。
[登壇予定者]⼀⼒昭圭、⼩池⼀⼦、鈴⽊理策、Slow Art Collective、⾼橋臨太郎、中村政⼈、並河進、
⻄原珉、⻄村雄輔、宮本武典ほか ※五⼗⾳順
[⽇時]10 ⽉ 16 ⽇(⽇)13:30-16:30
[会場]寛永寺内 計画展⽰会場付近 ※⾬天時は寛永寺 ⼩書院
[料⾦]無料(要予約)
[定員]30 名
*各イベントのご予約は以下からお願いいたします。
トークセッション https://artsticker.app/events/1726
シンポジウム https://artsticker.app/events/1727
*上記イベントは東京ビエンナーレのウェブサイトでもご案内しています。また関連企画として、東京各所をコンダクター(案内⼈)とめぐるテーマ別のツアー企画も予定しておりま

東京ビエンナーレ 2023 実施体制について

第 1 回⽬に共同総合ディレクターを務めた⼩池⼀⼦(クリエイティブディレクター)に代わり、⻄原珉(キュレーター)を新たに共同総合ディレクターに迎えて始動しました。この他、前回から継続する関係者および、新たに加わった主要ディレクター陣は以下の通りです。
総合ディレクター 中村政⼈、⻄原珉
プロジェクトプロデューサー 中⻄ 忍
プロジェクトディレクター 岩間 賢、⼩池⼀⼦、宮本武典
クリエイティブディレクター 佐藤直樹
コミュニケーションディレクター 並河 進
PR ディレクター 若林直⼦
メディアリエゾン 今⽥素⼦
WEB ディレクター 根⼦敬⽣
エディトリアルディレクター 内⽥伸⼀
事務局⻑ 宍⼾遊美
プロジェクトマネージャー 森⽥裕⼦
コーディネーター 川上智⼦、佐藤華林 ※2022 年 10 ⽉ 1 ⽇現在

東京ビエンナーレ 2023 総合ディレクタープロフィール

中村政⼈(なかむら・まさと)

アーティスト。東京藝術⼤学絵画科教授。3331 Arts Chiyoda 統括ディレクター。東京ビエンナーレ 2020/2021 総合ディレクター。アートを介してコミュニティと産業を繋げ、⽂化や社会を更新する都市創造のしくみをつくる社会派アーティスト。第 49 回ヴェネツィア・ビエンナーレ⽇本代表。平成 22 年度芸術選奨受賞。2018 年⽇本建築学会⽂化賞受賞。1997 年よりアート活動集団「コマンド N」を主宰。全国で地域再⽣型アートプロジェクトを展開。東京ビエンナーレ 2020/2021 では⼩池⼀⼦(クリエイティブディレクター)と共に総合ディレクターを務めた。

⻄原珉(にしはら・みん)

キュレ̶ション、⼼理療法⼠。90 年代の現代美術シーンで活動後、渡⽶。ロサンゼルスでソーシャルワーカー兼臨床⼼理療法⼠として働く。⼼理療法を⾏うほか、シニア施設、DV シェルターなどでアートプロジェクトを実施。2018 年⽇本に戻ってアートとレジリエンスに関わる活動を試⾏中。現在、秋⽥公⽴美術⼤学教授。⽶国カリフォルニア州臨床⼼理療法⼠免許。東京ビエンナーレ 2020/2021 では参加作家として「トナリプロジェクト」を推進し、東京ビエンナーレ 2023 においても継続した活動を展開する。

東京ビエンナーレ 2023 ステイトメント

1993 年、銀座でゲリラ的にアートプロジェクトを⾏った時のことである。私は、8丁⽬の裏路地の路肩に、無垢の鉄の彫刻をそっとおいた。⾼さ 50 ㎝くらいでとても⼀⼈で持ち上げることは難しい重さである。路肩空間の寛容性を読み解き狙いを定め設置した。しかし、いざ置いてみると、移動・撤去されることに対して不安になり、作品を標識のポールに鎖でつないだ。何気ない路肩がかなりの緊張感ある場に変容した。極めてプライベートなものをパブリックな空間に置くことで、その両者の関係を探りたかった。

今だから思えることだが、個⼈的⾏為がパブリックな空間でしっかりと受け⼊れられるためには、多くのつながりをつくらなくてはならない。歩道管理⾏政の許可、近隣のビル管理者、商店街、町会などの意向確認、災害時などの安全管理対策、設置対策予算の捻出、⼟地の歴史性や認知度等、多くの関係機関との交渉や配慮をしなくてはならない。これらの関係を気にせずに、⼀⼈でゲリラ的に置くこともできるが、もし街の多くの関係性を調整しつながりをつくれば、法規的にも問題ないように設置することができる。当時は後者の関係が全く⾒えていなかったからか、かえって⼤胆な⾏動ができたのかもしれない。

⼀つの作品をめぐって起きたささやかな緊張が、街という公共の場所で新たな価値観になるということは、⽬先のつながりだけではなく、その街の全体的な関係性を⾒いだし、それらとつながり、変えていくことを意味します。街に現れた「個」の存在が、それまでとは異なる⾒え⽅や出来事としてとらえられていく̶̶ さらに、⾒えにくいつながりをたぐり寄せるように紐解き新しい関係をつくっていくことは、「個」のあり⽅を変え、社会的に確かなものとして信頼を得ることになるでしょう。2 回⽬となる東京ビエンナーレ 2023 は、「リンケージ つながりをつくる」がテーマです。リンケージとは、⼈間関係だけではなく、場所、時間、⼈、⽣物、植物、できごと、モノ、情報などあらゆる存在が複雑に関係しながら、刻々と変容していく世界に⽣きているからこそ⾒いだされていく「関係性=つながり」です。現在のアートの社会的役割の⼀つは、コロナ禍における社会環境の変化に対して⾃由な視点で関係性を持てることにあるのではないか。東京ビエンナーレ 2023 は、そんなアートの「つながる⼒」への信頼に基づいて、アーティストと、企業と、地域と、参加者、来場者がそれぞれを取り巻く「リンケージ(つながり)」に気づき、それらに加わる新しいつながりをつくり出す場となっていきます。そして、アートを通じて連環するリンケージが、江⼾東京の基層⽂化と地場の形成プロセスに光をあて、東京ビエンナーレが次の 100 年後まで続くつながりをつくる活動の礎になることを⽬指します。

総合ディレクター 中村政⼈ ⻄原珉 ~The Ginbrart 展をめぐる⻄原珉との対話より、中村政⼈の発⾔(2022 年)~

■リンケージとは
東京ビエンナーレ 2023「リンケージ つながりをつくる」は、私たちと私たちのまわりの「リンケージ(つながり)」をとらえることをテーマとします。場所、時間、⼈、⽣物、植物、できごと、モノ、情報
私たちは、あらゆる存在が複雑に関係しながら、刻々と変容していく世界に⽣きています。なかでも、ここ東京は、⾮常に緻密な関係性によって織り上げられた社会だと⾔えるでしょう。東京の歴史、⽂化、地域と、またそれを⽀えている⼈たちと、新しくつながるには? 新しいつながりをつくるには?つながりを強くしたり、深めたりするには? 現在のアートの社会的役割の⼀つは、社会環境に対して⾃由な視点で関係性を持てることにあるかもしれません。東京ビエンナーレ 2023 は、そんなアートのつながり⼒をもとに、参加者、来場者がそれぞれの「リンケージ(つながり)」を⾒いだし、さらに新しいつながりが⽣まれ、広がっていく場となることを⽬指します。